松田華衣(まつだ はなえ) 立川・府中アスレティックFC オフィシャルチアダンスチーム アスレファンタジスタ チーフディレクター。大学で建築を学び、大手ハウスメーカーで建築士として勤務。その一方アメリカンフットボールXリーグのチアリーダーとして活動。2013年からはプロバスケットボールに関わるチアリーダーズのディレクター・プロデューサーとしても活躍している。2016年からアスレファンタジスタのディレクターを務め、現在は新條恵美子ディレクターとともにチーフディレクターとして活動をしている。
ファンタジスタの笑顔とエネルギーが、アリーナ全体に伝播していく。
人の気持ちは伝播する。
誰かの笑顔を見ているだけで、気づけばこちらも口元が緩み、笑顔になることは無いだろうか。
いつも笑顔で前向きな人と一緒にいれば心地良いし、その逆に不機嫌な表情の人が近くにいれば、疲れてしまう。
それは、笑顔の人を見ると、脳内の神経細胞であるミラーニューロンが活動し「この人と同じ笑顔になろう」と共鳴することがその理由と考えられている。あなたの周りにもそんな「会うだけで元気になる人」や「会うと疲れる人」がいるだろう。どうせなら自分も、人に元気を与えられる存在になりたい。
試合も同じだ。自分がプレーしていなくとも、選手の魂がこもったプレーを見ていると、自らの脳細胞、ミラーニューロンが刺激され共鳴する。だから自分事としてゴールに歓喜し、失点を悔やしがり、勝利に満足する。
ファンやサポーターは傍観者ではなく選手の感情に共感しながら、試合を擬似的に体感している。だから熱くなれるのだ。
ファンタジスタの笑顔が、観客を元気にさせる。
そんな、沸き立つアリーナの千数百名の中で、もっとも明るい笑顔で選手とファンにパワーを贈り続けているのが勝利の女神、オフィシャルチアダンスチーム アスレファンタジスタだ。
彼女たちは「自分たちの笑顔で、周りを元気にさせたい」という思いを持っている。つまり、会場の観客全員のミラーニューロンを刺激する役割だ。
チーフディレクターを務める松田華衣はチアリーダーとして経験を積み、現在は主に裏方として活動する。メンバーのように華やかな舞台に立つことは少なく、ディレクターとして様々な仕事をしている。
いつも笑顔を絶やさず元気に応援するチアリーダーたちを、あらためて眺めていると、とても尊い存在だと実感できる。
試合終了間際に同点ゴールを決められ、勝利目前で引き分けに終わった悔しい試合でも、彼女たちは残念な素振りをまったく見せずに、会場を後にする観客たちに笑顔を振りまいている。しかしそれは試合結果に無関心だからではない。
勝てなかった悔しさを抱えたファンやサポーターたちが、少しでも笑顔になれるようにと「私たちも悔しいけど次もみんなで応援がんばりましょう!」という心からの気持ちを送っているのだ。
そんな前向きで明るいパワーが伝わってくる。
実際、悔しい気持ちを持って客席を後にし、出口へと向かう階段を降りると、明るく元気なファンタジスタメンバーが並んでいる。その笑顔を見ると、突如我々のミラーニューロンが活性化する。その瞬間、悔しい思いが減衰し、前向きな気持が生まれ「しかたない、次節は勝とう」「また応援にこよう」という気持ちになれる。
それはファンタジスタのメンバーたちがつくった笑顔のパワーだと言い切れる。
人に力を与えるために応援する、という生き方。
そんな、すべての人を笑顔にさせる存在であるアスレファンタジスタは、2010年に誕生。今季は10人のメンバーと、チーフディレクターを務める松田華衣、ディレクターを務める新條恵美子ががホームアリーナで選手を応援している。
5歳の頃からクラシックバレエを習っていた松田がチアリーディングを始めたのは高校生の部活。アクロバティックなパフォーマンがかっこよくて憧れたからだという。
チアリーディングは表現を競う競技だ。組体操のような難易度の高い技を磨き、技術の高さやチームとしての勝利を求めるものだった。大学でも競技を続け、さらに技術やスピリットを磨いていった。
しかし、チアリーディングはもともとフットボールやバスケットなどの他競技応援するものだ。自らが主役として採点される存在であるチアリーディング競技もやりがいはあるが、その本質は観客を楽しませること、見ている人を元気にすることだ。
松田は「スポーツを応援する側」も経験してみたいと考え、大学卒業後は社会人のチアリーディングチームに所属することになった。
約3年間アメリカンフットボール Xリーグのチームで活動。その中で役割はどんどん広がりスクールの講師として、また振り付けや指導など活動の場を広げていった。数年後には、大手企業に勤める建築士という安定した立場を捨ててチアリーディングの世界で食べていこうと決意するようになった。
チアリーダーズのディレクターの仕事は多岐にわたる。
例えばメンバーの選考、育成、指導はもちろん振り付けを考えたりユニフォームのデザインも。さらに試合はもちろん、イベントの準備から進行からと、全てにおいて休む場面が無い。それがディレクター役割なのだという。
そんな多忙な日々を送る中で、また新たなチャンジの機会が訪れた。
それは Fリーグのチアダンスチームの仕事だ。
2016年シーズン、Fリーグの可能性と、伸びしろを感じながらも奮闘する日々
1点の重みがバスケよりも大きいフットサルの盛り上がりはまた違うものがある。このシーズン、アスレは郷土の森で8勝2敗2分と高い勝率を残していた。それを後押ししたのは、間違いなく府中アスレらしい個性的な応援や、観客との一体感だと実感している。
派手な演出はなくても、会場には熱心なファン、サポーターや家族連れ、子どもたちが毎試合集まり、あたたかな空気が生まれていたからだ。
松田がファンタジスタに加わった2016/17シーズンのクライマックスは、プレーオフを争うアスレの前に立ちはだかる王者名古屋オーシャンズを迎えての府中開催最終戦。この日は1,124人の観衆を集め会場全体が盛り上がり、アスレは2点を先行される苦しい立ち上がりながら後半逆転に成功し見事4-3で勝利した。
選手、ファンタジスタ、サポーター、開場の観客がつくりだした勝利ともいえる、とても満足度の高いゲームだった。
もっと一体感のある会場で、観客に楽しんでもらい、選手を後押ししたい。
今シーズンアスレは、府中市立総合体育館よりも大きなアリーナ立川立飛にホームアリーナを移したが、観客動員は少し減少している。観客数という数字よりも、アリーナ立川立飛の広いスタンドだと、1,000人を超える観客が入っても空席が目立ち閑散とした空気が漂ってしまう。府中だったら8割の入りだったけど立飛だと半分。それが現実だ。
でもそれは仕方のないこと。アスレにとって新しいチャレンジを支えるのも、がんばるクラブを応援するべきファンタジスタの役割だからと、前向きに考えている。
自分たちができることは、パフォーマンスと応援、笑顔で人を喜ばせること、元気にすること。スタンドにいる観客全員に笑顔が伝播するように、ファンタジスタが元気な笑顔とパフォーマンスをする。
その事で、アリーナに初めてきた人や、今までは手拍子をしなかった人も、今日は手を叩いてみようという気になってほしい。手を叩いて、好プレーに声援をおくり、ゴールに喜んだほうが、絶対に楽しいはずだから。
ファンタジスタのメンバーはそれを増幅する。笑顔のファンタジスタメンバーと、目が合った人がつい手拍子を始めたり、声を出していた人がもっと大きな声で応援をすることもある。
ひとりでも多くのお客さんが、アスレを応援することで楽しい気持ちになってもらう。それらはすべてお客さんに喜んでもらうためだ。日常生活から切り離された時間を楽しんでもらうため。そのために裏方として生きる。主役は選手と観客。
見ている人を元気にさせ、選手を応援することが仕事という、チアリーダーの本懐だといえる。松田は、表舞台に立つそのメンバーたちを支える存在だ。
1月20日は今シーズンホームゲーム最終戦。
ぜひ会場でファンタジスタのパフォーマンスを、笑顔を、そして伝わる気持ちを多くの人に感じていただきたい。
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